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          《旅の終焉》 
 

(命を投げ出し、守り抜いてくれた者に報いるため・・・・・)

その思いだけが今を生きる糧としている自分がいた。

諸国に散った妖魔を狩り出しさすらう旅を続けること13年・・・・・

漆黒の闇の中、妖魔と対峙する綾女の姿があった。
「やはり貴様が妖魔だったか!」
目の前には今まで狩ってきた者たちとは違い、あきらかに強い妖気を
放つ妖魔がいる。
『影忍!死ね〜』妖魔の鋭い牙が綾女の身を深く引き裂いた!
「ぐあぁぁぁ〜!!」
鮮血が辺り一面に降り注いだ!!
『貴様はもう終わりだ・・・・』悶え苦しむ綾女の胸に、妖魔の鋭い牙が振り下ろさ
れる!!
「くっ・・」
綾女はとっさに妖刀を抜き、妖魔の牙を防いだ。
「私は貴様に殺される訳にはいかない!たぁああっ!!」
流れ落ちる鮮血を押さえながら、持ち替えた妖刀を振り下ろすと
妖刀の青い閃光が妖魔を包みこんだ!
『ギャァァァァ〜』閃光は妖魔を飲み込みその姿を消し去っていった・・・・・・
・。

「やったのか・・・・・クッ・・・」
引き裂かれた傷口からの鮮血を押さえるのが精一杯だった。

「私は死ぬのか・・・・・」
もはや綾女には、立ち上がる力さえも残っていなかった。

【綾女・・・】

薄れゆく意識の中で自分の名を呼ぶ声がする。

ふと顔を上げると、そこには最愛の者の姿が目に移った。

「左近・・・・・?」
幻なのか現実なのか・・・・その時の綾女にはどうでもよかった。
「会いたかった・・・どうやら私はここまでの様だ・・・・」
綾女の頬を涙がつたいこぼれ落ちた。
「もういいかな・・・・・・私は少々疲れた・・・・」

「・・・・左近・・・・・・・」

つぶやきは悲痛な飛沫となり愁いの雫となり・・・涙となった。

その時、綾女の瞳に移る左近の手が綾女の頬の涙を拭った。
【もういい・・・苦しむことも悲しむこともない】

【綾女・・・これからはずっと一緒だ・・・・】

左近の腕に抱かれながら・・・・綾女はふと思った・・・・。

(ああ・・・ここが私の本当に還りたかった場所・・・・・・)

安堵の笑みを浮かべながら、綾女の体はそれきり動くことはなかった。

闇夜に浮かぶ月の光がやさしくその身に降り注ぐ・・・・・・・。
その月は、別れた時の満月とは違い二人を結ぶ輝きに満ちていた。
 
 

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