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懲りないヤツラ
 

注:本作品は平成14年6月に行われたオフ会時、深夜アルコール等を友にしつつ行われた5W1Hゲームの中から発生したものである。
よって、以下の文章には次のキーワードが含まれなければならないという制約が存在する。読み手さん各位は、その点を留意した上で筆  者が制約を逸脱していないか要チェックしつつお読み頂きたい。
 以上。

≪制約事項 … SYKの引いたカードの内容≫
つい今しがた鳳来洞で、髪を切った綾之介とオールバックの左近が、本音を言って対決した。
 
 
 

 綾之介は、いま猛烈に怒っている。
あまりに猛烈に怒っているため、常識と理性が吹っ飛んでしまい、猛吹雪の中をザカザカとものすごい勢いで突き進んでいる。
吹きすさぶ風は、視界をほぼ100%閉ざし、柔らかい新雪は足に絡み付いて動きを鈍くする―――筈なのだが、怒りの余り普段より大股かつ荒っぽくなっている歩調は自然の障害をものともせず、視界にいたっては、端から今の綾之介は何も見ていなかったので関係なかった。
 唯一、彼女が感じているものと言えば、つい最近、長さが肩口までになってしまった髪が、四方八方から押し寄せてくる強風によって舞い上がっている感触ぐらいのものだった。が、しかし、その髪の毛こそが、そもそも今怒り狂っていることの原因を作ったとも言えるので、髪の毛のことを意識すればするほど、彼女の不愉快指数は上昇するだけだった。
 今の彼女の脳裏には、つい今しがた交わされた会話の流れから起こったことに対する怒りだけが、ただただ渦巻いていた。
 

 「おぬし、何だその髪は!」
 最後に別れたとき、盛大に横っ面を張り飛ばした男は、綾之介の顔を見るなりそう叫んだ。
 「…朧衆とやりあった時に、中途半端に切り取られたから長さを揃えただけだ」
 言外に『文句があるか』という響きを持たせながら、綾之介はじろりと左近を睨み付けた。
 二人が今いる此処、鳳来洞は現在スランプ中(? 当事者の自己申告制による為、事実は未確認)の左近が、引きこもり―― もとい、修行の場に選んだ場所であるが、綾之介は不登校児を学校に連れて行こうとする学級委員のごとく、度々この地を訪れては物別れに終わっている。 
 前回は左近に予想外の行動に出られ、つい張り飛ばした挙句に走り去ってしまったのだが、今日こそは前向きな結果を引き出すべく綾之介はやる気満々で来たのだが、久しぶりに会った左近は、前回よりも更に輪をかけて彼女にとって意味不明な反応を示してきた。
 …ついでに言うならば、前回会ったときよりも、輪をかけてむさ苦しい風体になっている。
 着衣は所々すりきれだして貧乏ったらしくなり、顎にはむさ苦しさを増長する無精ひげ。彼の人相風体を説明するときに一番の特徴になる茶髪は、もともと性別を考えれば鬱陶しいくらいの長さだが、更にそれが拍車がかかって長くなっている。こうなると、本人もさすがに邪魔なのか、前髪は後ろにかきあげて一括りにしている。つまり格好よく言えば『オールバック』くそみそに言えば『おでこちゃん』な髪型だ。
――なんて風に、綾之介はこのとき結構ミも蓋もない観想を抱いていたのだが、一方の当事者である左近に、そんなことが分かるはずが無い。
 …とゆーか、そんなんが分かる位なら、こんな所に引きこもりなんぞ端からしとらんじゃろ…と思うのは筆者だけだろーか☆
何はともあれ、鳳来洞にいる男と女の間には狭くて深い溝があった。
 

 「髪は女の命だろうが!何でむざむざと斬られるようなドジをふむんだ」
 本当は、あの長い髪がサラサラと揺れる様が好ましかったのに、もったいない――というのが、正直な感想だったのだが、そんな台詞は照れくさくて口が裂けても言えない。だから、つい左近はきつい口調で詰ってしまった。が、元々がニヒル(爆笑)でクール(大爆笑)なキャラが売りの彼がそんな風に言うと、照れ隠しには到底聞こえない。喧嘩の叩き売りだ。
 ――っていうか左近、綾之介に男性心理…特に恋愛モード入ってる男の心理をわかれって言うほうが無理があるぞ。
 閑話休題。ともかく綾之介は左近の売り言葉(と、彼女には取れた)を破格の値段(当社比)で買い取り、バリバリの戦闘モードにシフトチェンジした。
 ドスの効いた低音でぼそりと言う。
 「深窓の姫君じゃあるまいし。忍が髪の一つや二つ(?)命のやりとりの間に短くなったくらいで騒ぎ立てるほうがどうかしている」
 半ば独白めいた風を装って言うその口調のトゲトゲしさはヤマアラシかガンガゼ(ウニの一種。トゲがとても長い)か… 気温にしたら氷点下。こんな口調で話されて、笑っていられる人がいたら見てみたい。
 そして左近はそうゆう口調で話されて、笑っていられるタイプではなかった。そう、元々の彼は、とっても皮肉屋さん♪
 「深窓だの忍だのという以前に、髪を斬られるような事になる自体が未熟な証拠じゃないのか?」
 皮肉屋の本領大発揮。
 ――ピキッ
 綾之介のこめかみに青筋が浮かんだ。しかし、左近はたき火に薪を追加していたため、そのことに気がつかなかった。そして気が付かぬままに更なる言葉を繰り出した。
 「未熟な奴の言い訳にしか聞こえんな」
 ―――ピキピキッ
 綾之介の青筋が二つに増えた。
 「そんな程度の腕前で、お主らは本当に信長を倒せると思うているのか?」
 ――――ブチッ
 綾之介の中から、この時点で理性は消えた。
 そして、普段は理性で押さえ込んでいた本音が感情の赴くままにほとばしり出た。
 「うだうだ理屈をこねるだけで何もしていない奴に意見される筋合いは無いっ」
 ……プッチン
 人は、本当のことを言われると怒る生き物である。
 そう、左近だとて、決して好き好んでこんな所に籠もっている訳ではない。
 本当は、ちゃっちゃっと妖刀を使えるようになって、目下のところ自分の恋路を阻んでいる最大の敵、信長をぶちのめして綾之介を口説きたいところなのだ。
 とはいうものの、現状としてそれが出来ていない身としては、実は密かに焦りを感じていたりしたので、綾之介の本音トークは彼の心の中の地雷原を直撃した。
 ―――結果、誘爆した本音が左近の口をついてでる。
 「それなら『何か』してやろうか?」
 言うなり、素早く綾之介の細腰を抱き寄せ、頤(おとがい)に手をかける。
 さすがは『早手』の左近。素晴らしい早業(笑)だ。
 どうやら彼の場合の本音は、真面目でウブな綾之介のそれとは方向性が違い、妄想と本能と煩悩に基づく分野の方にあったらしい。
 いや、まあ或る意味ひっじょーに判りやすい本音だとは思うんだがね。大人の本音っちゅーかね、うん…。
 だがしかし、そんな男の下半身系の本音が、色恋沙汰に疎いSYKの所の綾之介に、はたして通用するものだろうか?
 答えは当然、否である。
 唐突に左近に抱き寄せられた綾之介は、一瞬、頭の中がフリーズしたが次の瞬間には手・足・口が同時に動いた。
 「こぉのっ、痴れ者が〜!!」
 絶叫と共に自由を取り返すと、格闘ゲームのキャラもかくやというような素晴らしい蹴りと鉄拳が立て続けに繰り出された。(※ お好きな格ゲーの必殺技を当てはめてください)結果、左近の顔はあっという間に原型をとどめないまでに変形し、彼の唇は愛しの綾女のそれとではなく、地面とキスすることとなった。
 …合掌。
 一方の綾之介は怒りの余り蒼白になった顔で、地面にのびた左近に怒鳴りつけた。
 「お前の頭の中には学習機能はないのか?」
 「……」
 この時点で、その問いに答えを返せる余力は左近に無かった。
 が、その無反応が綾之介の怒りを更に煽る事となった。
 …いやはや、人間理性を失うって恐ろしい。こうなると、常日頃の冷静なクールビューティーと同一人物とは到底思えません(笑)。まあ性格のほうは元から直情径行だけれどもね☆
 「もういい、もうお主なんか当てにしない。その腐れた性根と鬱陶しい髪をどうにかするまで、もう絶対に私の前にその顔を見せるんじゃないぞ! わかったな!」
 最後にそう言い捨てて、綾之介は怒り狂ったまま鳳来洞を後にした。
 

 ――と、いう経緯で綾之介は怒りの雪中行軍をする運びとなったのだ。
 ともかく今は、前回ならず今回も情事に雪崩れ込まれそうになったことが腹立たしくてしょうがない。ついでに言うと、今更ながら自分の短くなった髪に対して長くなっていた左近の髪のことも腹立たしい。
 思わず、綾之介は飛騨山中にくまなく響き渡りそうな雄たけびをあげた。
 「長髪の男なんて、大っ嫌いだ〜〜〜!!」
 

 さて、もう一方の当事者の左近はその後どうなったかというと、この時の綾之介のシャウトが聞こえたか、はたまた鳳来洞から立ち去る際の言葉を律儀に守ったからなのか、数ヵ月後、安土城に姿を現した時には長かった髪をばっさりと短くしていた。
 煩悩は捨てられ無かったけれどもね(爆)
 
 

                            終
 

「後書き」
 本当はこの半分以下の長さで収まるはずだったのですが、結構長くなってしまい自らの修行不足に反省しきりです(泣)
 とりあえず、5W1Hのネタから文章を起こしてみたらこんな話になってしまいましたが如何なものでしょう?
 左近、完全に良いとこなしでしたが、私が書く左近はいつもどこかしらで不幸な目に遭っているので、きっとこれが彼の運命なのでしょう(笑)
 へたれな文章でお目汚しをしてしまいまして、申し訳ございませんでした。

BY: SYK
 
 

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