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とりあえず見なかったことにしておこうか、と一瞬だけ。半ば本気で綾之介は考えていた。
伊賀に向う道中。今までだって、どうも連れの二人の行動には違和感のようなものを感じていたのだが、さすがに今度こそ目を背けてばかりはいられない。
我らが持っているのは「御神刀」ではないのか?!
御神刀というからには、当然ありがたーいものの筈。事実、綾之介にとっても今持つ小太刀は、家長である父が後生大事に護り奉っていたものだ。悪ガキなんぞが持ち出した暁には(もっともそんな命知らずをやらかす者など居なかったが)死んだほうがマシだと思えるくらいの折檻を食らったに違いない。
・・・ハッキリ言って。
「いや〜、今日は随分大漁じゃったぞぉ〜♪」
怒り・憤り以前の、「呆然」とした面持ちで。綾之介は、「エモノ」をシシャモのごとく串刺しに意気揚揚と歩いて来た龍馬の姿と、其れを見て「薪がいるな」と呟きつつ枯れ木に太刀をふるい、あっという間にバーベキューの為の燃料を確保した左近の姿を見比べていた。
・・・・・・うちんとこの、悪ガキ・・・以下かも(頭痛)
確かに食料は必要だ。近くに小川に魚が沢山いたというのは感謝すべき事だろう。そして魚を焼く為には当然、薪は必要だ。それは判る。
だが・・・。「槍」は、手当たり次第に獲物をぶっ刺す漁師の銛程度の扱い。
「太刀」は、通販おなじみ高枝切りバサミ程度の扱い。忘れちゃならんのはいずれも「ありがたい御神刀」であるという事。
・・・・・・・・・・(ぷっちん)
何かが綾之介の中ではじけた。
香澄でしょっちゅう炸裂させていた「悪ガキをとっちめる」本性が目覚め、御神刀を何だと思ってる罰があたるぞ幾らなんでもその扱いは何だ等々、夏の嵐のような勢いで同行者二人に対し、小言を機関銃の如く浴びせ掛けた。ようやく。一段落した(綾之介の息が切れた)ところで、あくびをかみ殺しつつ左近が軽く右手を上げる。
「かたい事を言うな、綾之介。」
退屈そうな声。反省してないという事はどこから見ても明白だ。
いや、こういう時にこそつけ上がらせてはいけない!とエキサイトした綾之介が反撃に出ようとしたその瞬間だった。「バカと刃物は使いよう。忍びたるもの1つの道具で色々こなす事も必要だぞ。」
「ば、バカと・・・っ?!」
「おおう、さすがは左近殿、話が分かる!」『バカと刃物は使いよう』・・・その左近の発言は、綾之介を確実に黙らせ、龍馬を瞬間的に回復させた。
男二人が和気藹々と盛り上がる中、バカと並べられたら幾ら何でも御神刀、立つ瀬が無かろうに、と綾之介が完璧に脱力状態でじっと手の内の妖刀を眺めていた時だった。「そう言えば、綾之介殿の小太刀は包丁代わりに便利そうじゃなあ。」
どこまでも豪快(無神経そう)な龍馬の言葉。
綾之介の額に青筋がくっっっっきりと浮かんできたのを知って知らずか、左近がうんうんと頷いて代わりに答える。「そうだな。魚を捌くのにはちょうど良い大きさだ。」
「鱗を取るのにも便利そうじゃろ?」
「この魚は鱗を取らなくても大丈夫そうだがな。」挙句。
「あの青い光で魚も焼けるんじゃないかのう〜?」
握る拳に更に力がこもり、二の腕にも怒りの血管が浮かび上がる。
どうも綾之介の小太刀は、「今ならお得!便利な万能包丁」程度にしか男どもには見えていないらしい。
綾之介は思いっきり息を吸い込んだ。「・・・んな事に使うなああっ!!(怒)」
余談:
綾之介とは異なり、男二人の妖刀がなかなか発動しなかったり「光がくすんでる云々」言われちゃったりしたのは、この時、バカと一緒にされた(?)妖刀が思いっきり臍を曲げたから、なのかもしれない。(大嘘TM)
<おわり>